第4回 絵や写真を使う

パデュー大学 外国語外国文学科 外国語教育メディアセンター長

畑佐一味


今月は授業活動のなかで使われる絵や写真などのグラフィックスを中心に、コンピュータでどのように処理できるか紹介していきます。まず、語学教育でのグラフィックスの利用方法を三つに大別してみましょう。

  1. ドリルセッションなどの教室授業で絵カード(cue card)として使う。この場合は学生全員が見えるよう比較的大きい絵や写真が必要になる。
  2. インフォメーション・ギャップをうめるなどのアクティビティー用の小道具として使う。
  3. プリントやテストに貼り込んで使う。
このようにして使いたいイメージは大抵次の四つのうちのいずれかのやり方で取得しいると考えられます。
  1. 新聞・雑誌などからの切り抜きまたはコピー。
  2. 教科書や副教材のなかで使われている絵のコピー。
  3. 市販の絵教材。
  4. 自作。(線画やまんがを自分で描くまたは上手な人に描いてもらう)
こういった状況で一番活躍しているのは、おそらく糊と鋏みとコピー機ではないでしょうか。テストをワープロソフトで書いているときに、リターンを何度か打って絵を貼り込むスペースをあらかじめ作り、一端印刷した後で絵を貼って、それを人数分コピーするという作業は多くの方に馴染みの深いもののはずです。

クリップアートを使ってみる

まずクリップアート(Clip art)とよばれる電子化(CD-ROM化)された絵のセットの利用を考えてみましょう。クリップアートに収められている絵は大抵の場合版権フリーですから、自由に使えます。市販されているものの中でJapan Clips II CDというものを最近米国で見つけましたので、例にとってみることにしました。このCD-ROMはいわゆる日本的なイメージが集められているのですが、文化紹介だけでなく語学の授業で役に立ちそうなものもかなり収められています。

EgWordでは次のようにして、簡単に絵をCD-ROMから文書のなかに貼り込むことができます。

  1. 挿入メニューから「書類/絵を...」を選ぶ。
  2. CD-ROMに入っているイメージを選択する。(絵がどこに入っているかは、CD-ROMの説明書を参照。)
  3. 文書に絵が貼り込まれる。
  4. 大きさを変えたいときは、絵をダブルクリックし出てきたダイアローグボックスに縮小/拡大率をタイプする。
図1は上のようにして絵を貼り込んだワープロ文書の例です。
 図 1

グラフィックスが入っているファイルの保存形式にはいくつか種類があるので、ここで代表的なもの二つに簡単にふれておきます。まずPICT(ピクトと発音する)ファイルと呼ばれるマッキントッシュではよく使われる形式があります。この形式のグラフィックスは大抵のワープロソフトで読み込み可能です。次に、EPS(イーピーエスと発音する)ファイルというのがあります。これはマッキントッシュでもIBM互換機でも読めるのでよく使われます。ですから、「このグラフィックスファイルはPICTですか。」という具合に聞いて、「そうです」と答えが返ってくればマッキントッシュで読めることに間違いありません。

ここでもう一つクリップアートの例を紹介しましょう。これは筑波大学ランゲージグループ著のSituational Functional Japanse (凡人社)の中に出てくる動詞と形容詞を表わす線画を電子化して(スキャンして)、使いたい絵を検索し、簡単にワープロソフトに貼り込める(ペーストできる)ようにしたものです。開発はハイパーカードを使いパデュー大学で行いました。現在は著者と出版社の了解のもとで、現場の教師の方々の反応を調査するためアンケート調査を実施している最中です。まず電子絵カードとワープロソフトを両方とも開きます。(図2参照)そして、Find...ボタンをクリックし検索事項をタイプします。(図2では「komu」を検索した。)欲しい絵が見つかったら、Copy Pictureというボタンをクリックします。すると、その絵がクリップボードにコピーされます。そして、ワープロソフトにいって、ペーストし、最後に絵の大きさを調整します。糊と鋏がいらなくなったのがお分かりいただけると思います。

 図2

クリップアートを加工して使ってみる

では、次にこのような絵に手を加えて使ってみましょう。つまり、ある絵の一部だけを使ったり複数の絵の一部を集めて新しい絵を作ったりするといったような使い方です。図3は動詞の「借りる」用の絵のなかで使われている鉛筆の絵をコピーし、加工して数詞の練習用のプリントで使うためのいろいろな鉛筆のイメージを作っているところです。ここではSuper Paintなどのいわゆる「お絵かきソフト」が役に立ちます。

 図3

図3の左側に見えているのはSuper Paintのなかで使えるツールの一部です。ブラシ、ペン、消しゴム、スプレー、ペイントなどいろいろなツールが用意されているのがわかりますね。またその下には、円、四角形、多角形、曲線などを描くためのツールがあります。そして、一番上にあるのはセレクションツールと呼ばれ、絵の一部分を選択するのに使います。セレクションツールもただ四角く囲むだけの単純なものからラッソツール(rasso tool)と呼ばれる入り組んだ複雑な形を囲むタイプのものまで何種類もあります。そしてさらに、描いたものをコピーしたり、拡大縮小したり、向きを変えたり、変形させたり、自由に回転させたりすることができます。では、もう一度図3を見てください。まず電子絵カードを一枚全部SuperPaintにコピーしてから、もう一つ別の新しいファイルを作り、これを数詞の練習のためのプリントの原稿にします。次にセレクションツールを使って、鉛筆の部分だけを電子絵カードから新しいファイルにコピー&ペーストします。その鉛筆をさらにコピーしたり、形を変えたりして、この新しいファイルを練習用のプリントに仕立てていきます。このような作業はもとになる絵がありさえすれば、思ったよりもはるかに短時間でできます。次の図4.1、4.2, 4.3も同じようにして一枚の絵からコミュイカティブアクティビティー用のカードを作った例です。いろいろなセレクションツールを使って物や動物の位置が少しずつ変えてあるのがお分かりいただけると思います。

 図4ー1              図4ー2

 図4ー3

スキャナを利用する

図4の基になった絵は同僚がペンで描いてくれたものです。それをスキャナでスキャンしてコンピュータに取り込みました。スキャナは第一回でも簡単に触れたようにフラットベッド型とよばれるものが一般的です。性能は300dpiか400dpi(一インチを300ないし400の点で認識する)のものが適当だと思われます。写真などもきれいにスキャンできるので、カラースキャナが増えてきました。しかし、プリンタが白黒のばあいはカラーイメージはグレースケール(白黒の濃淡)で印刷されます。スキャナには必ずスキャン用のソフトがついてきますから、それを使ってスキャンします。このとき写真ならカラーかハーフトーン(又はグレースケール)でスキャンするときれいにできます。一方、原稿が上のような線画の場合はラインアートというセッティングでスキャンするのが適当です。そしてスキャンしたイメージはPICT形式で保存すると後でお絵描きソフトやワープロソフトから直接開くことができますから、便利です。

どんな絵をスキャンしたらいいかという質問に対する答えは次のようになります。「スキャンする手間は1度だけですから、もしその絵が繰り返し使われる性質のものだったら、スキャンしたほうが得です。」スキャナはもう一度後でOCR(optical character recognition)という文字認識を行う時にも活躍しますから、幅広い使い方ができる周辺機器と言えます。どのぐらい糊と鋏とコピー機を使わずにできるか挑戦してみてください。

次回はいよいよインターネットや電子メールについて紹介します。いろいろ雑誌もでていますから、少し見ておいて下さい。



<今回使用したソフトウェア>
SuperPaint 3.5,  Aldus Corporation.
Japan Clips II CD,  Matsuri Graphics.
電子絵カード(アンケート調査用) このプログラムは http://www.sla.purdue.edu/fll/JapanProj/より
                 入手可能(フィードバックをくれるという条件で無料)


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