イギリス流マナー
ある時、日本の外交官がイギリス人貴族の家に招かれた。まだイギリスに来たばかりのその日本人は、イギリス流のテーブルマナーがよくわからず、大変緊張していた。そこで、日本人は隣に座ったイギリス人の所作をすべて真似しようと思った。これなら不作法にはならないだろうと考えたのだ。
まず、イギリス人が紅茶の入ったカップを傾け、ソーサーに紅茶を少しこぼした。それを横目で見た日本人も、紅茶の入ったカップを傾け、ソーサーに紅茶を少しこぼした。次に、イギリス人は優雅な手付きでソーサーにミルクを数滴こぼした。日本人も笑みを浮かべながらソーサーにミルクをこぼした。続いて、イギリス人は砂糖を少量、ソーサーに振りかけた。もちろん、日本人もこの動作を巧みに真似した。
それから、イギリス人はテーブルの下へとゆっくりソーサーを持っていき、そこで丸くなって寝ていた猫の前にそっと置いたのだった。